滅亡への歩み

創設者時代は、各家独自の魔法や能力を秘匿して、横と繋がりを持たない各家主義。

このような形態になったのは、持って生まれた能力、使いこなせる術・好かれる精霊、世界より受ける恩恵に傾向があり、当然それは血族であれば似かよってくる。

血には力が宿り、血筋によって使用できる魔法や向く能力に大きな違いがでる。

力の系統は大体13に別けられ、それぞれの系統−似たような能力に秀でた血筋同士はそこそこの繋がりをもつ。

といってもせいぜいが分家とかどこそこのを嫁に貰ったからちょっとは、とかいう縦の繋がりばかり。他家に嫁いだ場合も、実家の術は漏らさないことが鉄則。

しかしこの中で当然、産まれた血筋とそぐわない能力を持った者もいて、その系統の力をまったく仕えないため、強い魔法力を秘めていても墜ち溢れや、魔法力を持たない者、スクイブと貶まれた。

基本的には同系統間での血族婚なので、生殖力・繁殖力が弱く、代わりに力と長命を持つ種族。それが魔法族。

自然の摂理を基本的に準拠し、その不可思議さを解き明かしまた理に同化するを望む、進化の歩みを止めた停滞した種。

一方、この停滞期に台頭してきたのがマグル。

爆発的な繁殖力と身勝手な欲望で、世界に広がっていく。

最初、この幼いばかりでなんの力も持たなかったマグルを加護し、神とすら崇められることもあった魔法族だが、彼等が数を増やしていくと同時に、その魔法力を恐れられ異端視された。

姿形が色素の違いが多少あったとはいえ(魔法族には真紅とか青とか緑とかの体毛を持つ者も多い)まったく同型で、混血が可能であったことも災いし、まったく別個の種族であるにもかかわらず、マグルは自分達という種の突然変異という眼で魔法族を見た。

忌避され、少数種族であったこともあり、追いやられていく。

また、血族婚を繰り返し、安穏とした現在を選び進化を止めたことにより、種としての限界が現れ始めた時期でもあった。全体として魔法族の能力は衰退を始め、反動のように、最後のあらがいの如くに理に反した強大な魔法力を持ったものが時折産まれてくる。(これがゴドリック等)

逆に魔法族の血が流入したこともあるのか、弱いとはいえマグルに魔法を使う者が現れ始めた。しかも、その数と力を強めていく。

これは世界が進化を続けるマグルに傾き、マグルを選択したと言うこと。

世界に宿る力の恩寵は、魔法族から奪われ、マグルに映ったと考えられた。

怖れた魔法族は、ますます血族で固まり、維持するために他を拒絶してより裡に閉じこもろうとする。

が、それに危機感を覚えた何人かは、血筋だけではなく、魔法族全てで結束を深めようと提唱。

これを受けて、各系統の中で、最も巨大な魔法力をもった血筋の家、筆頭13家が代表となって出席する全系統がそろう円卓議会が開かれ、他系統の血筋達との会合がはじまった。(同系統の血筋の当主を集めて議題の場は、そこそこ設けられていた)

スリザリン、グリンフィンドールら創設者4人はこの13家の本流。

しかし社交の場が開かれるようになり、子弟達の顔合わせなども多くされたが、そうそう交流が深まるわけもなく、各家秘密主義は変わらず、内情、家族構成、魔法術、薬学、知識などは秘密に閉ざされたまま。

これでは今までとなにも変わらない。能力に合わない教えのみを受ける、実力を発揮できない巨大な魔法力を持った者達がいるはずだ。これをどうにかしようと、創設者らによって最初の魔法学校、ホグワーツが開校される。

しかし開校される前後から、少し前から議論が繰り返されてきた今後の魔法族の進む方向性についての対立が特に酷くなり、派閥が起こる。

混血を容認する者と、拒否する者。

マグルとの混血を進め、二つの種族を融合させてマグルの中に魔法族を残そうという意見をもつ改革派。

それは既に魔法族ではない、それは我等の滅亡を意味する、魔法族の中だけで血を繋いでいくべきだという保守派。

この中間に、時代の流れに任せるべき、あえてどちらにも傾かず、個人の意思で好きに生きるべきという中立派がいた。

しかしその日和見では緩和剤にはならず、どちらの派閥も意固地に意見を譲り合うことををしない。

とくに混血否定派は、より弱体化が進む己達を恐れ血族婚では留まらず、まれにあった近親婚を更に頻繁に繰り返すようになる。

 

淘汰を拒み、滅亡を怖れ、

狂気の闇に走りて重なる血の宿業に先を見出せし者共。

それを正統と刻み、

と歴史の欺瞞に生きる者。

 

これが純血主義の始まり。

そして混血を進めていった各家は、魔法力の弱体化が急激に始まったので魔法界、議会での力を失っていった。

この時に、貴族法というものが制定され、ある一定の魔法力を保つ名家が指定された。

彼等は一般に適用される法の権限が及ばず、貴族法によってのみ縛られ、様々な特権を得ている。

しかし長く見てみれば、近親婚を繰り返した純血主義の家は弱体化こそ緩やかにしたものの、徐々にその血筋を途絶えさせていった。

逆に混血を推し進めた者達はある地点で弱体化が停止し、技術力を高めることによって勢力を増していった。また、まれに純血にもまさる魔法力を持った者を排出した。

これが親世代あたりの魔法界の現状である。